ゾディアック ~のめり込む人間の凄さと滑稽さ
「ゾディアック」を観た。巷の評判は芳しくなかったが、充分に楽しめた。
映画の冒頭でサンタナのラテンロック曲が流れる。そう、この物語のスタートは
1969年だ。ヴェトナム戦争が泥沼化し、ウッドストックに平和を叫んで若者が
集まった時代だ。
ゾディアックと名乗る連続殺人犯とそれを追うサンフランシスコ市警の刑事、
地元の新聞記者そしてこの事件に異常な関心を寄せる風刺漫画家が
主要な登場人物だ。迷宮入りをした実在の事件だと知っている私たち観客は
2時間半の上映時間にちょっとうんざりするが、スピード感がある映像は観客を
飽きさせない。
この物語の主役はプロの刑事ではなく、素人の漫画家だった。最初はゾディアック
が送りつける暗号の謎解きに興味を持つが、だんだんと深みにはまり込んで、
家庭をも犠牲にする。丁度、「未知との遭遇」のリチャード・ドレイファスを彷彿させる。
ドレイファスが宇宙船の基地の山を部屋一杯に作るように、漫画家も寝食を忘れて
謎解きに没頭する。
何かにのめり込むオタクは他人から見れば滑稽だが、本人はきっと幸福なんだろう
なあと思わせる。でも、女房子供を泣かしたら、あきまへん!