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ジミヘンのおいしいもの探し

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映画 「ありがとう」 を観終えて

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ベタな映画だ。ストーリーも荒削りで、カット割りもうまいとは言えない。

でも、素晴らしい映画だった。映画が、監督が、言いたいことがストレートに
伝わってきた。 ただ生きていること、ただ家族一緒にご飯を食べている
こと、それがどんなに幸福で素晴らしいことなのかを教えてくれる。

阪神大震災は、わたし自身の人生の歯車を狂わせた天災だった。
マンションは半壊し、妻は精神的なダメージを受けた。受験生だった長女と
長男はたいへんな苦難を強いられた。
何で、神戸が被災しなくてはならないのか? 何で、わたし達家族が
ひどい目に遭わなくてはならないのか? 運命を呪った。

でも、映画の主人公は違っていた。
「生かされていることに感謝しよう。 ボランティアの皆さんの気持ちに感謝
しよう」と、わたしに向かってそう言っているように聞こえた。
わたしは狭量の人間だ。当時の国の対応や、自衛隊の対応、そして近隣の
自治体の対応に納得がいかず、ずっと不快な気持ちを持ち続けてきた。
そして、ひとり達観して人生観を変え、悲劇の主人公を気取ってきたのかも
知れない。

でも、映画の主人公は違っていた。 
済んだことはもうどうしようもない。 後ろを振り返らずに、前を見て歩こう。
苦しくなったら顔あげて、奥歯折れるまでかみ締めて、笑うんやで
赤井の妻(田中良子さん)の言葉をかみしめる。

映画 「ありがとう」 を観終えて_a0048918_017382.jpg


まるで、神の手のひらに転がされているように翻弄され、気がつくと重い
タンスの下敷きになっていた。隣にいるはずの妻に向かって叫んだ。
「おーい、生きているか?」 暗い部屋からかすかにうめき声が聞こえた。
窓が開き、冷たい冬の空気が入ってきた。外は不気味なほど静まり返っていた。
ほとんど死を感じる静寂だった。
遠く、西の方角を見やると火災らしき煙の筋が2本、3本と立ち上るのが見えた。

陽が昇り、東灘区の両親を見舞い、家に戻る。食料品が底をつくとまずいと
思い、近所のスーパーに駆けつける。同じ思いの住民がたくさんいて、長蛇の
行列。 スーパーは素晴らしい対応を見せた。 パニックを起さないように
行列に説明を繰り返し、在庫している水や食料品を少しずつ販売した。
わたしは寒風のなか、5時間ほど並んで、数本のジュースと加工品を買い求めた。
一生忘れることができない思い出だ。

わたしの父は日支事変から太平洋戦争までの困難な時代を生き抜いてきた。
そして、わたしは大震災という試練を受けた。果たして人間というものは
「変わりのない明日が必ずやってくる」と思っている者に、何かを教えるために
試練を与えるのだろうか?

常に楽天的で前向きな赤井と、それを支える妻の好子。この2人を見ていると、
生きる希望がわいてくる。
プロゴルファーのテスト本選会で若い同僚に彼はこう言う。
崖にしがみついてる手を放してみ
余り必死にならんと、好きなゴルフを楽しんだらいいんや、と赤井は励ました。
そして二人はプロテストに見事、合格する。

エンドロールが始まり、河島英五の「生きてりゃいいさ」が流れる。
観客はそれぞれが「感謝する相手」と「自分の夢」を考えているのか、誰も席を
立とうとしない。
by jimihen-2 | 2006-12-09 00:22 | 映画
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おいしいものはどこにある? 


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