こんな奴、いるよなあ
初老のしがない音楽教師と悪がき達が出会い、やがてコーラスを
通じて心の交流を図る。
そういったドラマなのだが、やはり仏映画は一味ちがう。
ただ泣かせようとはしない。
「こんなことがあるから人生ってなかなか面白いよね」
そんな視点で描く。名作「アメリ」と同じ視点だ。
ラストの生徒たちが飛ばした紙飛行機のシーンにジーン!
インパクトが大きかったのは音楽教師が赴任してくる学校の校長だ。
上には媚びへつらい、先生たちを鼻で使い、生徒を虫けらの
ように扱う。「こんな奴、いるよなあ」と言った典型的なイヤな奴。
私は反射的に村上春樹の短編『沈黙』に出てくる青木のことを
思い出した。
要領が良くて、本能的な計算高さを持っていて、エゴとプライドの
匂いがプンプンと漂うような男、それが青木であり校長だ。
子供たちの心がコーラスによって開放されるストーリーより、
この校長のような男が世の中に沢山いるということが私の胸にわだかまりを残した。