上方落語の新しい風
常打ち小屋が少ない、噺家一門間の交流がない、マスコミで取り上げ
られる機会が少ないといった逆風をかかえてきた「上方落語」であるが、
ここにきて新しい風が吹き始めたようだ。
今年のGWに「上方落語まつり IN ミナミ」があり、噺家一門、芸能
プロダクションの枠を取っ払った新しい試みが実現した。
その流れは着実に前進している。
今回「動楽亭」へ「吉弥」「梅團治」「松喬」を聴きに出かけた。
そもそも「動楽亭」は、桂ざこばが造った小屋であり、米朝一門だけが
出演する専用ミニ寄席であった。
しかし、今回「夏休みスペシャル公演」と銘打って他の事務所の噺家が
数多く出演した。
当日トリを務めた松喬師匠の噺のまくらはこうだった。
「ここへははじめて寄せてもらいました。
場所がわからんでねえ。コンビニの近くや聞いてたんですけど、
コンビニの2階にあるとはねえ。
それに楽屋の入り口もわからへん‥。」
それから延々と”新世界花月劇場”へ出演していた若き日の思い出話
を語り、今日はまくらだけで終わりかなと思ったらそれから「壺算」
にするりと入った。
この日はお盆休みとあって、大変な大入りになった。
いつもは40人ほどの入場者のところ、100人を超す観客が集まった。
小屋のスタッフは補助イスを出すのに大わらわ。
満席の場内は大いに盛り上がった。
桂そうば 「うなぎや」
桂しん吉 「若旦那とワイラトエキスプレス」(創作)
桂吉弥 「書割盗人」
桂梅團治 「切符」(創作)
桂春蝶 「山内一豊と千代」
笑福亭松喬 「壺算」
しん吉と梅團治は一門間の壁を超えた”鉄ちゃん仲間”で、お互いに
鉄道マニアの創作落語でバトルをくり広げた。
かつて、大阪で落語を聴こうと思えば「独演会」や「一門会」を探して、
高い入場料を払い、見るしかなかった。
しかし、落語定席「天満天神繁昌亭」が誕生して以降、上方落語を再興
させようという気運が盛り上がってきた。
その流れは着実に「新しい風」となって吹き始めている。
”ちりとてちんの草若師匠”も草葉の陰でよろこんでいるだろう。