エバ・ペロンという女の一生
ストーリーに惹かれたわけではなく、A.L.ウェバーの
代表作のひとつとして見ておきたいと思った。
私は10年前にミュージカルにハマった。
「オペラ座の怪人」を日本各地に追いかけた。
その後、「キャッツ」「ライオンキング」「アイーダ」
「マンマミーア」「ジーザスクライスト・スーパースター」
などを観劇したが、やはりロイド=ウェバーの作品が
私にピタリと寄り添った。
アルゼンチンの片田舎に私生児として生まれた貧しい少女が、
その野心と才覚で大統領夫人にまで登りつめる。
そのとき彼女は何をしたのか?
貧しき者が権力と富を手にしてやることは決まっている。
それは「浪費」と「慈善活動」だ。
一部の国民からは”聖女”と持ち上げられるが、傾国の悪女
とも批判される。毀誉褒貶に満ちた人生。
このミュージカルは、チェ・ゲバラを模した人物の語りに
よって進行する。つまり、彼女に対してはどうしても
アイロニカルなトーンになる。
エバは一国のファーストレディーになり、政治にも口を出す
ようになる。しかし、所詮目先のことしか見ていない。
やがて自ら「副大統領になりたい」と口走るようになるが、
そのとき彼女の体をガンが蝕んでいた。
1952年、エバ・ペロンは33年間の短い人生を終える。
舞台の後半で、印象深いセリフがあった。それが私の耳に
ずっと残った。
『大衆は いつだって 気まぐれだ‥』
得体の知れない人間社会は、いつもこの言葉によって動いて
いるように思える。