善き人のためのソナタ
ベルリンの壁が崩壊して18年も経った今となっては
そんな緊迫感はない。
単なる歴史物語として観客はストーリーをたどるだけだ。
組織の中で生き残ろうとすれば、上司の尻でもなめる。
そんなヤツが認められて出世する。
保安警察の主人公は、反体制の劇作家の生活を盗聴することに
なるが、作家の言動を知るにつけ自らの愚かさを悟ってしまう。
そこに、この男の悲劇があった。
自らのこころを欺いて、本心を誰にも打ち明けられない世界は
やはり異常だ。
今の日本はほんとうに情けない国になっている。
官僚や役人の腐敗と脱力。一方で法律を守らないものを
寄ってたかってバッシングする「みんなで叩けば怖くない」
総いじめ社会。
テレビをつければ、毎日だれかが頭を下げている。
それでも、当時の東ドイツよりはマシだ。
自由に発言できる現状に感謝すべきなのだ。
ほんとうのことが言えなくなる世界、
何がほんとうなのか分からなくなる世界。
それは、いつ身近にやってくるかわからない。