ざこば師匠の「文七元結」
この日のお目当ては吉弥、小枝、ざこばの師匠方。特に小枝の落語を聴く機会は
あまりない。どんな噺を聞かせてくれるんだろう。
人気者が出演するとあって、かなりの観客が入っていた。
トップは優々君の「動物園」。私は先代文枝の動物園をよく聞いていたので、多少
違和感を感じた。さげも良くなかった。
続いていつも元気ハツラツの吉の丞君だ。出し物は「上燗屋」。
声も良いし、噺も上手いのだが、一本調子になるのが残念だ。声の強弱がほしい。
吉弥は、季節に合った「ふぐ鍋」を披露した。このネタを何度か見ているが、食べる
仕草、飲む仕草がとてもイイ。
さて、小枝の登場だ。楽しいマクラから「悋気の独楽」へつないだ。
例の甲高いしゃべり口を聞いていると、先代文枝の顔とダブって見えた。目を閉じて
聞いていると、先代がしゃべって居るようだった。
(ランチに食べた日本橋「マドラスカレー」のカツカレー)
中入り後に登場したのは文鹿師匠。初めて聴く噺家である。
寄席へ来るまで「文我」と勘違いしていた。あちらは”ぶんが”で、こちらは”ぶんろく”
である。出し物は「夢八」。馴染みのない噺であったが、とても面白かった。
内容から察するに、「東の旅」の一部なのだろうか?
大トリは、この小屋の席亭でもあるざこば師匠。
テレビで見る顔と違って落ち着き払った表情には風格がにじみ出ている。
さて、演目はアッと驚く「文七元結」であった。
立川談春のCDで聞き込んだネタなので、どんな”ざこばの人情噺”を聴けるのか
興味津々だ。
長い噺をかなり端折って進行したが、ホロリとするタイミングが見つからない。
残念だ。師匠にとっては新境地開拓として江戸の人情ものを取り上げたのであろう
が、芸風がマッチしていないようだ。数年前に”あやめ姐さん”の「紙屑屋」を聴いた
ときにも同様の痛さと違和感を感じた。
先代文枝の十八番である演目を苦労して覚え、やっと披露できたといううれしさが
読み取れたが、どうしても先代と比較してしまうので、聞くのが辛かった。
さて、今後”ざこば元結”がどう変化していくのか見守りたい。